ステレオからサラウンドへ

ドルビープロロジックII
既にこのホームページの広報資料などでご紹介したように、ドルビーは21世紀に相応しい新しいマトリックスサラウンドデコード技術、ドルビーサラウンド・プロロジッックIIを導入しました。プロロジックIIは、あらゆる2chステレオ音声プログラムを5.1chで再生するための技術です。
ここではプロロジックIIをAVファンの視点で解説してまいります。
ディスクリートサラウンド全盛の今、なぜ新たなマトリックス・デコード技術が必要なのでしょうか? プロロジックIIは、次のようなあなたの不満を解決します。
「大好きな映画なんだけど、5.1chじゃないんだよね…。古い映画だからしょうがないか…。」
現在、洋画作品のDVDはドルビーデジタルによる5.1chディスクリートサラウンド音声が主流となっているのはご存知のとおりです。最新のハリウッド映画はもちろん、かなり古い世代の作品でもサウンドトラックをリミックスした5.1ch音声を持つものがあります。しかし、第二音声の日本語はどうでしょう?大半が日本語はドルビーサラウンドによるステレオ音声になっているはずです。また、80年代の作品にはドルビーサラウンドの作品が少なくありません。これらを「5.1chサラウンドで聞けたら…」という想いはどなたにもあるのではないでしょうか?プロロジックIIはそれを実現することが可能です。
「デジタル放送チューナー買ったんだけど、5.1ch放送って意外と少ないんだよね…。画質が良い分、音の貧弱さが気になって…。」
デジタル放送は5.1ch放送が可能とというものの、現実にはごく限られた洋画作品が5.1chでオンエアされているのが現在の状況です。もちろん、今後様々な番組で5.1ch放送を試みると思いますが、5.1ch放送が主流になるにはまだ時間が必要です。もちろん、現行のアナログの地上波放送が全てデジタルに切り替わるのにはまだ時間を要します。ということは、かなりの期間、相変わらずステレオ音声が主流になりつづけることは間違いありません。「このライブ音楽番組を5.1chで聞けたら…」、プロロジックIIなら可能です。
「ライブ録音のCDをたくさん持っているんだけど、DVDのライブものと比べると臨場感がイマイチ。 これも5.1chで聞けたら…」
プロロジックIIによる5.1ch再生は、あらゆる2chステレオ音源に対し可能です。ライブ盤はもちろん、通常のスタジオ録音でもライブ顔負けの臨場感。プロロジックIIならできます。
つまり、ディスクリートサラウンドが普及しつつある今だからこそ、「もっと5.1chを!」というニーズに応えるために、2ch音を5.1ch化するマトリックス・サラウンドデコード技術が必要なのです。プロロジックIIは安定した動作、原音を損なうことのない高忠実度、自然なサラウンド感を実現する最新、最高のマトリック・デコード技術です。
技術的な位置付け
ドルビープロロジックIIはステレオ音声を5.1chに拡張して再生するためのマトリックスデコード技術です。様々な AVアンプに装備された残響付加型のDSPモードとは異なり、ステアリングロジック回路により、メイン5chを作り出すもので、単に包囲感(アンビエンス)を作り出すだけでなく、明確な定位、ディスクリート5.1chに匹敵する移動感を実現することができます。もちろん、プロロジックIIは、ドルビーデジタルやプロロジックと同様、言わば自然吸気型エンジンのようなものですので、ターボに相当するDSPモードをONすることも可能です。
プロロジックとプロロジックIIの違い
ここではドルビープロロジックがどういうものかご理解いただいている、という前提で解説を進めます。
(プロロジックについての解説が知りたい方は、技術年表をご参照ください。)
- エンコード/デコード処理 VS デコード処理
従来のプロロジックは、ドルビーサラウンド(4chの音源を2chに溶かし込む、というマトリックス処理)エンコードされた音声を、もとの4chに復元(デコード)させる技術です。したがって、プロロジックで正しいサラウンド効果を得るにはドルビーサラウンド・エンコード処理されたステレオ音声であることが前提になります。サラウンドエンコードされていない通常のステレオ音声に対し、プロロジックデコードを行った場合は、十分な効果を発揮できない場合がありました。つまり、プロロジックはデコード側だけでは「片肺飛行」になってしまうものだったのです。
一方、プロロジックIIは専用のエンコード処理を必要とせず、デコード側だけで完結している技術で、ドルビーサラウンドエンコードされたステレオ音声はもちろん、通常のステレオ音声にも十分な効果を発揮します。
- モノサラウンド VS ステレオサラウンド
ドルビーデジタルもプロロジックも、そしてプロロジックIIも、再生に用いるスピーカーシステムは、通常フロント3本、リア2本、それに必要に応じてサブウーファーを追加する、ということに変わりはありません。しかし、実際に処理されている音声のチャンネル数でいうと、従来のプロロジックは、フロント 3ch、リアはモノ(1ch)の4ch構成となっています。一方、プロロジックIIは、ドルビーデジタルと同じように、フロント3ch、リア2chの 5ch構成です。
モノサラウンドとステレオサラウンドの違いは決定的なものです。モノサラウンドの場合、サラウンドchの情報は、包囲感を作ることに主眼が置かれ、明確な方向感を持ちません。一方、ステレオサラウンドではそれぞれに定位を持たせることも可能ですので、全包囲を有効に使った、より自然なサラウンド表現が可能です。
- サラウンド7kHz VS 全ch フルバンド
従来のプロロジックでは、サラウンドchに再生帯域に制限があり、上限が7kHzでしたが、プロロジックIIでは、この帯域制限がなく、メイン5chが全てフルバンドとなりました。
プロロジックでは、モノサラウンドと7kHzの帯域制限のために、後方の音場の聞こえ方にやや圧迫感がありましたし、表現上でもフロントが主、リアは従という色彩が強かったのです。プロロジックIIは上述したような革新により、自然で見通しの良い音場表現が可能になりました。
- サブウーファー出力
プロロジック、プロロジックIIとも、サブウーファー(以下、SW)に送られる信号はドルビーデジタルのように独立している訳ではなく、基本的にはもとのステレオ音源に入っていた低音成分を抜き出しているものです。この点では両者に違いはありません。
ドルビーデジタルとプロロジックIIの違い
- ディスクリート VS マトリックス
プロロジックIIは5.1chの出力を備えているという点ではドルビーデジタルと同じです。しかし、ディスクリート方式(ドルビーデジタル)とマトリックス方式(プロロジックII)の差はチャンネルセパレ-ション、言い方を換えると、チャンネル間のクロストークとして存在します。ドルビーデジタルは原理的にクロストークがゼロですが、プロロジックIIにはクロストークが存在します。 これは音場再生にとってはマイナス要素となります。しかし、ソフトによってはプロロジックIIの音場は、このクロストークの存在によって非常に密度の高い印象となることもあります。
- LFE chによるSW VS メインchからの再配分によるSW
大雑把に言うと、専用の低音効果ch(LFE:Low Frequency Effect)を使うドルビーデジタルとメインchの低音成分をローパスフィルターで抜き出して使うプロロジックIIとなります。ドルビーデジタルの LFE chにはギミックな演出のための重低音が、メインchと比べてかなり大きなエネルギーで入っている場合があります。一方、プロロジックIIはメインch (より正確にいうと、フロント3ch)の低音成分を使いますので、重低音の再現力ではドルビーデジタルが上です。
このように、プロロジックIIの位 置付けはドルビーデジタルとプロロジックの間にあった表現上のギャップを小さくするもの、ということがご理解いただけると思います。
プロロジックII製品は、プロロジックIIの持っている様々な機能を、対象ユーザーに合わせて選択して搭載することが可能です。プロロジックII搭載、とキャッチフレーズされた商品でも、必ずしも全く同じ機能を持っているとは限らないことにご注意ください。
ON/OFFボタン
最もシンプルな機能としてはプロロジックIIのON/OFFボタンを持つだけ、というパターンです。どんなステレオソースについてもプロロジックIIをON/OFFすることで、ステレオと5.1ch再生を切り換えることが可能です。
2つのモード
二番目にシンプルな機能としては、単純にON/OFFするだけでなく、ONに対し2つのモード、すなわちMovieモードとMusicモードを持つ、というパターンです。
Movieモードは映画再生にパラメータを最適化したものです。ドルビーサラウンド・エンコード作品は、このモードで視聴するとより効果的です。サラウンドchに対し、10msecのディレイ(5本のスピーカーを全て等距離に置いた場合)を与えることで、サラウンドchへのダイアローグの漏れ込み(クロストーク)を聞こえにくくするハース効果を得るようになっています。
一方、Musicモードは音楽再生に最適化したパラメータを持たせました。サラウンドchは定位よりも包囲感が得られるチューニングになっています。また、サラウンドchへのディレイは付加されません。このモードは通常のステレオ録音、つまりCDなどを再生するときに用いると良いでしょう。製品上ではどのようなスピーカーの配置に対応できるよう、ある程度のサラウンドディレイ調整が提供されるのが普通です。
Musicモードの調整機能
高度なマニアを対象とする製品では、2つのモードを持った上で、Musicモードにユーザー調整機能を持たせることもできます。これらのユーザー調整機能はMusicモードにしか動作しません。Movieモードは、ドルビーサラウンド録音、つまりサウンドエンジニアが意図したマルチチャンネル再生のイメージがありますので、それを忠実に再現するようパラメータは固定される必要があります。一方、Musicモードは、通常のステレオ録音を前提としています。つまり、録音エンジニアは、2ch再生のみを想定して音を作り込みます。すなわち、その録音がマルチチャンネルの環境でどのように再生されるべき、という正解は存在しないのです。そこで、ユーザーに調整機能を与えることで、より気持ちの良い音場を探ることができるようにしたのです。
- センター・ウィズス(幅)・コントロール (Center Width Control)
この機能を日本語に翻訳するのは多少無理がありますが、強いて言うなら「センター音像イメージ幅調整」というところでしょうか?和製英語的に言うと「センター・ブレンド・コントロール」という感じです。つまり、プロロジックII内部のロジックデコーダで抽出したセンターch信号を、センタースピーカーだけで再生する状態から、徐々にL,Rのスピーカーに振り分ける(その分センタースピーカーのレベルを下げることでエネルギーを等価にする)機能です。
【この機能によって得られる効能】
1) 車載製品の場合、このセンターをL,Rに振り分けていくことで、運転席、助手席、両方の前方にボーカルイメージを定位させることが可能になります。
2)ホーム製品の場合、フロントの3本のスピーカーに全く同じものを用いたり、同じ高さにセッティングすることは容易ではありません。そのために、センターの音色がL,Rと異なったり、音場がスムーズに繋がらない、ということが起きがちです。映画の場合は映像がアンカーになるので、違和感が少ないのですが、映像なしの音楽の場合は非常に気になります。この機能を用いることで、センター成分をL,Rにこぼすことで、音色の不一致を緩和させることが可能になります。
- ディメンション・コントロール
簡単に言うと、フロントとリアのレベル差を調整する機能で、カーオーディオで言うところのフェーダーに近いものです。録音によって、フロントが強くでるもの、リアが強くでるもの、と多様になりますので、この機能で各々のソフトに対し、好みのバランスを得ることができます。
- パノラマ・モード
プロロジックIIは原音忠実、自然なサラウンド感をコンセプトとしていると説明してきましたが、この機能は例外的なもので、いわば「面白い、わかりやすい機能」という位置付けです。フロントの音場を左右に大きく回り込ませ、サラウンドchに繋げるような印象になります。正確な定位よりも雰囲気を楽しむための機能です。
プロロジックIIは既に一部市場に出ているAVアンプを含め、様々な商品への応用が可能です。ドルビーデジタルを搭載しない製品も可能ですし、映像再生を伴わない、つまりMusicモードのみ搭載する製品も可能です。
【ホーム製品】
- AVアンプ
- TV
- ミニコン
- バーチャル製品(TVを含む)
- PC
- ドルビーヘッドフォン搭載製品
註:バーチャル製品、ドルビーヘッドフォン搭載製品にプロロジックIIを積むと、ステレオソースに対しても、5ch効果(ステレオサラウンドのバーチャル効果)が得られます。
【車載製品】
- サラウンドデコーダー(DVDプレーヤー一体型、DVDナビ一体型を含む)
- CDレシーバー、カセットレシーバー
プログラムアップデートによるプロロジックIIの追加
- オンキョー インテグラリサーチ RDC-7
- TX-DS989
- TAG Mclaren AV-32R
- Meridian568、861など
註:TAG, Meridian製品は最近出荷分以降、プロロジックII実装状態で販売。
プログラムアップデートの詳細については各メーカーにお問い合わせください。
各社のURLは以下のとおり。
プロロジックII搭載新製品情報
| オンキョー |
国内市場向け「Digital Theater Station」 GXW-5.1(B) を4月末、同 AVアンプ「TX-DS595(N)」、「TX-DS494(N)」を5月中旬発売北米市場向けについてプロジックII搭載製品の今春導入を発表 |
| ケンウッド |
北米市場向けについてプロジックII搭載製品の今春導入を発表 |
| Parasound |
CEショーでプロジックII搭載製品を発表 |
| Outlaw Audio |
北米市場向けについてプロジックII搭載製品の今夏導入を発表 |
| Sherwood |
北米市場向けについてプロジックII搭載製品の今春導入を発表 |
実際のコンテンツでプロロジックII再生を行った体験レポートです。視聴に用いたのはメリディアン568サラウンドプロセッサーのプログラムアップデート版。
プロロジックIIで観る
最初に視聴したのは、DVDビデオソフト「パトリオット」(北米版、リージョン1)。この作品にはドルビーデジタル5.1ch(英語)とドルビーサラウンド2ch(仏語)が入っているので、以下の3通 りの視聴を行いました。
- ドルビーデジタル5.1ch・英語音声
圧倒的なDレンジ、音場の繋がりのスムーズさ。音数の多さ。見事なできばえのサウンドデザインです。リアルな表現と演出的な表現が見事にバランスしている印象です。
- 従来のプロロジック・フランス語音声
一番最初に気になったのはサラウンド云々以前にフランス語のダイアローグの膚触りの違い。それに慣れてくると、サラウンドの有様が見えてきます。視聴に使ったシーンはチャプター4。冒頭の野外の虫の声は、前側からは聞えてくるが後ろ側は薄い印象。部屋の中に響く靴音の移動感も唐突な感じが否めません。何より違うのは砲声。かなりサラウンドchを積極的に使用した演出ですが、ドルビーデジタル5.1のときはリアの左右で撃ち合いが展開するのに対し、モノサラウンドのプロロジックではリア全体が漠然と鳴り響くのみです。
- プロロジックII・フランス語音声ドルビーデジタル5.1と比較すれば砲声の重さなど迫力の点では落ちるものの、音場の繋がりの良さ、微小レベルの音の多さ、音場全体の見通しの良さはかなり肉薄しています。驚異的なのはリアに展開する撃ち合いで、5.1ディスクリートには及ばないものの、左右の方向感が明確にあります。フルバンド、ステレオサラウンドの威力を思い知る瞬間でした。
今回は時間がなくて試すことができませんでしたが、ドルビーデジタル5.1ch未対応のレーザーディスクのリニアPCM音声をプロロジックIIで聴いてみたいところです。お気に入りのLDの価値が一気に復活することは間違いありません。
プロロジックIIで聴く
ここではお気に入りのCDを数タイトル、プロロジックIIのMusicモードで聴いてみました。
「ホリー・コール:Blame it on my youth」
ホリー・コールの独特の鼻にかかった柔らかな声を何ら損なうことなく、センタースピーカー上に浮かび上がらせてくれました。ステレオ再生だとわずかに頭を振るだけで、微妙に声質が変わったり、大口になったりと、リスニングポイントがクリティカルですが、プロロジックIIでは少々オフセンターして座ろうが、首を振ろうが安定しています。「Calling」では長めの残響がきれいにリアに拡散していきます。
「イーグルス:Hell Freezes Over」
おなじみライブの「ホテルカリフォルニア」を聴いてみましょう。同じタイトルがさる著名な5.1ディスクリートサラウンド作品としてリリースされていますが、その5.1ミックスは客席側にパーカッションを配するような過激なものでした。一方、同じタイトルのCDをプロロジックIIで聞くと随分趣きが異なります。どちらが良いかは賛否あるとして、ここで聴けた音質はリニアPCMのクオリティを全く損なわないものですし、ライブの臨場感を見事に再現してくれました。
このように、プロロジックIIは全てのステレオ音源、CD、MD、TV放送、レンタルビデオ、そしてもちろん2ch録音のDVDやLDを5.1chで楽しむことを可能とするものです。プロロジックIIは、音色変化、ダイナミズムに対する着色性を極限まで減らし、なおかつ安定したクリアな音場を提供することが可能です。5.1chシステムを既にお持ちの方はもちろん、「5.1chで鳴るのはDVDだけだから」という理由で導入を躊躇している方、プロロジックII搭載製品があれば、5.1chサウンドは常に貴方の元にあります。是非お験しください。